「サヨナラ・モンスターの付属ツールって、どうしてわざわざ
“嫌な過去”を思い出させるような作りになっているのか?」
ここに、はっきりとした答えがあります。
その一つが、2021年に発表された記憶研究で示された事実です。
しかも興味深いことに、この研究が出るずっと前から、
僕は自分自身の体験としてすでに同じ仕組みの効果を感じていました。


1. まず前提:「ネガティブ記憶 × ポジティブな再解釈」が記憶を書き換える
2021年、Megan Speerらの研究チームが発表した論文
「Finding positive meaning in memories of negative events adaptively updates memory」は、
シンプルだけれど非常に重要な問いを扱いました。
「過去のネガティブな出来事をあえて思い出し、
そこにポジティブな意味を見出すと、
その記憶そのものや、思い出した時の感情は変わりうるのか?」
この研究では、参加者に
- 自分のネガティブな自伝的記憶(つらかった出来事)を思い出してもらい、
- その記憶について
- ポジティブな意味を探すグループ(Positive)
- ただ思い出すだけのグループ(Control / Neutral)
- 別のやり方をするグループ(Negative, Distraction)
などに分けて比較しました。
その結果、
- ポジティブな意味づけを行ったグループは、
- 1週間後、2ヶ月後にその記憶を再び思い出したとき、
- よりポジティブな感情を感じ、
- 記憶の内容にも新しいポジティブな要素が組み込まれていた
- ただ思い出すだけのグループでは、
- 時間とともに自然な“風化”はあるものの、
- ここまでの変化は起きなかった
さらに重要なのは、
研究チームはこの変化を**「記憶のアップデート(再固定化)」**として捉えていることです。
一度、過去の記憶を“開き”、
その中身に新しい意味づけを追加し、
その状態で再び脳に保存し直す――
というプロセスが、実験的に示されました。
つまり、
「過去の嫌な記憶を思い出す」+「ポジティブな意味づけを行う」
というセットは、
単なるポジティブ思考ではなく、
記憶そのものが書き換わるプロセスである
と、科学的にも裏付けされたわけです。
ほらね、僕がずっと言い続けてきたことですよね。サヨナラ・モンスターでも、トラウマ転換ウォーキングでも、それ以前の記事でも。閉鎖したサイト「みんなに聞いちゃえ」でも。
2. なぜ「過去のネガティブな記憶を想起させる仕組み」にしているのか?
サヨナラ・モンスターの付属ツールは、意図的に
- 過去のネガティブな出来事を具体的に思い出させる
- そのときの感情・状況・自分の解釈を書き出させる
- そのうえで、**意味の再解釈(リフレーミング)**を促す
という構造になっています。
表面的には、
- 「なんでわざわざ嫌な記憶を掘り返すの?」
- 「忘れたほうがいいんじゃないの?」
と感じる人もいると思います。
でも、さきほどのSpeerたちの研究が示したのは、
記憶をアップデートするには、
“一度きちんと想起する”プロセスが不可欠
だということです。
記憶を「開かない」まま、
上からポジティブな言葉だけを貼り付けても、
- 無意識レベルにある古い記憶・古い意味づけはそのまま
- いわば「上からシールを貼っただけ」の状態
になりやすい。
だからサヨナラ・モンスターは、あえて
「嫌な記憶を、安全な形で“開く”」
ことを最初のステップにしているのです。
3. サヨナラ・モンスターは、研究より先にこの仕組みを実装していた
ここからが、僕自身の話になります。
- サヨナラ・モンスターの販売開始:2018年
- 僕自身が「ネガティブ記憶を思い出してリフレーミングする」やり方に
手応えを感じ始めたのは:2012年頃
つまり、
2012年頃から自分自身で試行錯誤 →
効くと感じる →
2018年にツールとして体系化 →
2021年になって、
「あ、研究があとから追いついてきた」
という順番でした。
具体的にそれはどこか?
教材本編「必ずメモすること」と、付属ツール「質問文Bの1」です。2018年に販売開始しましたけど、それ以前は僕自身が6年間やっていた効果的な方法の一部です。
当時の僕は、当然ながらSpeerらの論文の存在を知るはずもなく、
- 自分の過去の痛い記憶を
- 何度も紙に書き出しながら
- 解釈を変えていく
ということを、ただ「これは効く」と感じて続けていました。
- 思い出しても前ほど苦しくない
- 同じ出来事を、別の意味で語れるようになる
- 自分の中で「もう終わったこと」に変わっていく感覚
こうした経験を何度もしていく中で、
「これは単に『気持ちが楽になる』レベルではなく、
記憶と自分の関係性そのものが変わっている」
と感じるようになりました。
その後、
- エクスプレッシブ・ライティング(感情表出を書く療法)が
心身の健康に効果を持つという研究群 - ネガティブ記憶に対する**認知的再評価(リフレーミング)**が
情動と記憶に影響を与えるという研究 - そして2021年Speerらによる
「ネガティブ記憶にポジティブな意味を見出すことで、
記憶がアップデートされる」研究
に出会って、
(この研究を見つけたのは、2025年11月30日)
「やっぱり、『嫌な記憶を一度きちんと開いて、
そこで意味を書き換える』というプロセスは正しかったんだ」
と、実践と科学が綺麗につながった感覚を持ちました。
4. 「ただ思い出す」のではなく、「どう意味づけし直すか」までを含めた設計
ここで大切なのは、
ネガティブな記憶をただ想起するだけでは、
かえってつらさを反復するリスクもある
という点です。
多くの研究でも、
単にトラウマや嫌な記憶を反芻するだけでは、
メンタルは悪化し得ることが指摘されています。
だからサヨナラ・モンスターの付属ツールは、
- 安全な枠組み(書く・フォーマット・ステップ)を用意した上で
- 感情をちゃんと感じることを許しつつ
- その記憶に対する意味づけを、新しい方向に導く
という流れを、かなり意識して設計しています。
具体的には、
- 「その出来事のせいで失ったもの」だけでなく
- 「そこから得たもの」「今の自分につながっているもの」
- 「あのときの自分は、実はよく頑張っていたのではないか」
といった問いを通じて、
“被害者としての物語”だけで終わらせず、
“成長・変化の物語”として再構成する
ことを目指しています。
付属ツールの質問文Bの1から終わりまでが、まさにそれです。
これは、ナラティヴ・セラピーや人生物語研究が指摘している
「人生をどう語り直すかが、メンタルヘルスに大きく関わる」という考えとも一致します。
5. 「行動」だけでは届きにくい領域に、ツールとして踏み込む
よく自己啓発では「行動しろ」と言われますが、
過去のネガティブな記憶やトラウマ由来の信念は、
- 行動だけを増やしても
- 「たまたま今回はうまくいっただけ」
- 「本当の私はダメなまま」
と解釈されてしまい、
無意識レベルの前提がそのまま残ることが多いです。
サヨナラ・モンスターの付属ツールが狙っているのは、
「行動を変える前に、
そもそも行動を支えている“記憶と意味づけ”の層に直接アクセスし、
そこを書き換えるための場を提供すること」
です。
- 嫌な記憶を、ただ避けて生きるのではなく
- 安全な枠組みの中でいったん開き
- そこで、丁寧に意味を書き換える
このプロセスは、
単なるポジティブ思考でも、
単なる行動量アップでもありません。
「記憶」「意味」「物語」に手を入れるツールとしての
サヨナラ・モンスターの役割は、
2021年以降の研究によって、
より明確に言語化できるようになりました。
6. まとめ:なぜ「過去のネガティブな記憶を想起する仕組み」なのか?
改めて一文でまとめると、
サヨナラ・モンスターの付属ツールが
「過去のネガティブな記憶を想起する仕組み」になっているのは、
記憶を書き換えるためには
一度その記憶を安全に“開き”、
そこでポジティブな意味を見出すプロセスが必要だから。
そしてそれは、
- 僕自身が2012年頃から体験的に実感していたことであり、
- ツールとして形にした2018年当時にはまだ理論的な裏付けが十分ではなかったけれど、
- 2021年以降の研究が「適応的な記憶アップデート」として追認してくれた
という、実践と科学の時間差のあるキャッチアップの物語でもあります。
AI時代になり、サヨナラ・モンスターが効果的であることを裏付ける研究は、もういくらでも見つけることができる時代になりました。リサーチすれば沢山見つけることができるはずですので、今後、暇があればそういった裏付けもとっていきたいなって思っています。気になる部分があればぜひお問い合わせください。
参考リンク(研究・解説)
- Speer, M. E. et al. (2021). Finding positive meaning in memories of negative events adaptively updates memory. Nature Communications, 12, 6601.(ネガティブ記憶にポジティブな意味づけを行うことで記憶と感情がアップデートされることを示した研究)
- Baikie, K. A., & Wilhelm, K. (2005). Emotional and physical health benefits of expressive writing. Advances in Psychiatric Treatment.(感情を書き出すことの健康効果についての総説)
- Pennebaker, J. W. (2018). Expressive Writing in Psychological Science.(エクスプレッシブ・ライティング研究の概観)
- Wang, Y. X. et al. (2023). A new understanding of the cognitive reappraisal technique. Frontiers in Behavioral Neuroscience.(認知的再評価がどのように感情と記憶に影響するかをまとめたレビュー)
- Ruini, C. (2022). Expressive and creative writing as therapeutic tools. Journal of Contemporary Psychotherapy.(表現的・創作的な書き方の心理療法的意義を扱うレビュー)
